【小説】弟が欲しい空君のために頑張る紅お兄ちゃん。
昨日言ってたエロ小説の箸休めとして書いていた、一色兄弟ほのぼの小話です。
誕生日プレゼントとして弟妹が欲しいショタ空君と、どうにか叶えてしんぜようと頑張る保護者生活一年目の紅のお話です。
紅がモブおじさんになんやかんやされますが、エロというよりどっちかっていうといじめられてます。
ちょっと男子ー!紅君泣いちゃってんじゃん謝んなよー!
こんな感じで一色兄弟は徐々に仲良くなっていったんだろうな……ビッグラブ……。
一色紅は困っていた。そう、珍しく困っていた。
弟の空が可愛すぎる。
最初は義理と罪悪感から「一人前になるまでは援助する」くらいの感覚で引き取った弟なのだが、なんかもう日に日に可愛さが増してしゃーないのだ。
ちなみに見た目が整ってるから可愛いわけじゃない(もちろん見た目も可愛いけど)
存在自体が! 生物として!! 根源的に!!! 可愛い!!!!!!
保護した当初はボロボロのガリガリだったけど、最近は毛並みも良くなって全体的にふっくらしてきた。表情に滲んでいた警戒心や猜疑心も徐々に薄れてきて、ニコニコ笑っている時間も増えてきた。さらに言うとたまに甘えたそうに近寄ってきたりして、も~~~本当に可愛い。この先一生暑いも寒いも感じずに、お腹いっぱいご飯を食べてふかふかの布団で寝て幸せな人生を送って欲しい。自分にまさかここまでの庇護欲が眠っているとは思ってもみなかった。さすが俺だ。可能性の塊すぎる。
潤んだ瞳で見つめられると変な声が出そうになるし、その流れで耳とか指とか食べたくなる事もしょっちゅうだ。さすがに頭から丸呑みしたいと本気で思った時には不安になって人に相談したところ、可愛すぎる物を見た時の防衛本能の一種で「キュートアグレッション」といい、皆大なり小なり持ち合わせている衝動らしい。なるほどそれなら納得できる。だってうちの弟めっちゃ可愛いもん。
さてそんな弟を引き取って、もうじき初めての誕生日が訪れる。
当然祝うに決まってる。こんな可愛い生き物が、今まで檻に入れられて誕生日も祝われずに生きてきた事実が信じられない。スルーされてきた誕生日の回数を百倍にして祝い返そう。暗い記憶の何もかもを、俺という光で塗り替えてやるのだ。欲しい物、食べたい物、行きたい場所、全てを叶えてしんぜよう。何でも言ってみるといい。
……しかし空から返ってきたオネダリは、予想の斜め上を行っていた。
「じゃあ……俺、弟か妹が欲しい」
と。
◇
「……っつー事でかくかくしかじか。仁亜、俺と一発カマして子供産んでくんね?」
「産むわけあるかぁっ!!」
というわけでここはK-product社長室。紅は、マネジメント事業部社員であり腐れ縁でもある青山仁亜に対して、セクハラどころではない最低な提案を持ちかけていた。当然言葉の金属バットで打ち返された。
「大体! もしあんたに子供が出来たとしても、それは空にとっては弟妹ではなく姪甥だからね!?」
「んな事ァ分かってるよ! ただ続柄的には姪甥でも、関係値的には弟妹みてぇなモンだろうが! 空が求めてんのは続柄の正しさじゃねぇの! 関係なの!!」
「じゃあセフレなり何なりの中から、あんたの子供欲しい女にでも頼めばいいでしょうが! 何でアタシ!?」
「だってガキ出来たら籍入れろって言われたり束縛されたりしそうで嫌なんだもん!! その点仁亜ならドライでいてくれそう。あとほら、俺女の好みは完全に胸尻派だからよ♡ 普通にドストライクな仁亜とヤってみてぇな~って♡」
「うっわぁ、こいつマジで倫理観終わってんな……」
仁亜はおっぱいもお尻も豊満な美女で、マネージャー業をやらせておくには勿体ない程の逸材なのだ。あわよくば寝られないかという下心混じりに、紅は事あるごとに彼女を口説いては冷たくあしらわれているのだが、今回のこれはさすがに酷い。女の敵すぎる。仁亜じゃなけりゃぶっ飛ばされるぞ自重しろ。
冗談冗談、と笑いつつも、どこまでが冗談なのか分からない態度で、紅は椅子に体重を預けなおした。
そこで二人の会話に割り込む人物が居た。というよりずっと社長室に居ながら口出ししていなかっただけなのだが、紅の秘書の黒澤である。
「社長。新しく家族を迎えたいという事でしたら、里親や養子縁組の制度もございますが」
「ん~、そういうヤツね~」
「……ただその二つは子供を引き取る側にも厳しい審査がございますので、社長の動機と生活態度では難しいかと」
「じゃあ何で提案したんだよ! おちょくってんのか!」
「いえ、そうではなく」
眼鏡のブリッジを押し上げて、黒澤は淡々と続けた。
「子供を産んでもらうにせよ、子供を引き取るにせよ、人一人を迎えるためにはそれに関わる方々への責任が伴う、という事です。空さんを迎え入れた社長であれば、ご理解頂けると思いますが」
「……」
「空さんの願いを叶えたいという社長の想いは尊いものですが、それに巻き込まれる命を軽く見積もるような御方には、私はついていきたくありません」
現役時代のマネージャーだった黒澤は、紅が十代の頃からの知っている仲である。もはや半分親のようなもので、紅に真正面から物申せる数少ない人間の一人だ。普段は影のように一歩後ろに控え、滅多と自ら口出ししない秘書。そんな彼からの静かで鋭い苦言を受けて、紅は反射的に悪態をつこうとしたのだが……結局開いた口からは何も発せず、居心地が悪そうに押し黙った。
珍しくしょんぼりした紅を前に、仁亜は黒澤に向けてひっそりと親指を立てた。グッジョブだと。
「……わーったよ。……仁亜も悪かったな」
「分かればいいのよこの脳タリンが」
ちゃんと謝ったので、先ほどの失言に関しては水に流してやる事にする。
「あのねぇ、一応言っとくけど、無理な事はちゃんと説明して諦めさせんのも教育の一つよ?」
「それは分かっけどよぉ! 手を尽くしもしねぇではい無理です、ってのもちげーじゃん!」
「あんたの手の尽くし方はたまに怖いから言ってやってんの!」
先ほどの冗談を抜きにしても、紅は一般常識や倫理観が欠落している傾向にある。普段は「絶対にダメなライン」というものを本能的に弁えてはいるものの、弟という良くも悪くもブーストがかかった今は、何か突拍子もない事をしでかさないかが心配だった。
「……ま、誰かと子供設けるにせよ養子縁組にせよ、それが絶対ダメとは言わないわよ。ただ子供はモノじゃないんだから。空と同じくらいの熱量で向き合えると思った時に、初めて視野に入れなさい」
「……んー……」
唇を尖らせながら言葉を受け止める表情は叱られた子供のようで、仁亜はつくづく毒気を抜かれた。今までは誰に何を言われようがされようが、ただ飄々とそこに在るのが紅という男だったからだ。
きっと紅にとって、初めて目の前に立ちはだかったままならない物。それが弟によって与えられる様々な感情なのだろう。
◇
そしてその日の夜。紅はベッドに転がりながらスマホをいじくっていた。画面に映るテーマは当然、新しい家族の迎え方である。
最初は現実的に、里親制度と養子縁組制度について調べていた。だが次第に興味は中世の錬金術へと逸れていき、最終的には精液からの具体的なホムンクルスの生成手順までも熱心に読みふけっている自分に気づいた所でハッとした。危なかった。うっかり禁忌を侵す所だった。
黒澤が言う通り子供を迎えるにあたり満たすべき要件が様々あり、眺めているだけでお小言を言われているような気がして頭が痛くなる。空に対しては明確な責任感。そして様々な感情が入り混じった熱意が確かにあるのだが、果たして赤の他人の子どもにも同じような物が向けられるかと言われれば、全く自信は無い。
「あ~~~ダル。なんか眠くなってきたぁ……」
小難しい事を考えているうちに、瞼が重たくなり始める。目を擦りながらスマホを脇に置く。また明日考えよう。微睡みゆく意識の中で、空が無邪気に喜ぶ顔が浮かんでは消えていった。
事が起きたのは、翌朝の事だ。
「……ん?」
ベッドから起き上がり、起き抜け一発目の煙草に手を伸ばした所で、股間に違和感を覚えた。
なんだかやけに……スッキリしているというか、引っかかりが無いというか、いつも当たり前にある質量を感じないというか、何というか……。
不思議に思った紅は、手に取った煙草を一旦サイドテーブルに置き、寝間着の股座に手を突っ込んだ。まさぐってみても、やはり無い。いつもソコにあるはずの出っ張りが無い。
「……んん!?」
慌ててスウェットを擦り下し、パンツの中を覗き込む。そこにはつるんとした下腹部があるだけで、棒も玉も何もない。そう。男として本来あるべきものが、無くなっていたのである。
紅は血相を変え、枕元のスマートフォンを引っ手繰った。ワンコールで電話に出たのは、何かあった時にはとりあえず呼びつけられる便利係……もとい秘書の黒澤である。
『社長、おはようございま』
「黒澤どうしよう!!」
『どうなさいましたか』
「俺のちんこがねぇッ!!」
『……は?』
電話口からは当然訝し気なリアクションがあった。
『社長、とりあえず落ち着いて下さい』
「落ち着いてられるかよ!! テメェも朝起きたらちんこ無くなってみろ!! すっげぇ怖ェぞ!?」
『ええと……お休みになられているうちに、男性器が無くなっていたんですか?』
「だからさっきからそう言ってんだろうが!!」
『怪我や痛みもなく?』
「マジでそれ!! もげたとか潰れたとかじゃなくて、最初っから無かったみたいにねぇんだよ!!」
『……寝ぼけていらっしゃいますか?』
「寝ぼけてねぇッ!! とにかくテメェ今すぐ俺ん家来い!!」
黒澤が来た所で絶対何も解決しないのだが、とにかく一人でこの状況を受け止められる気がしなかった。誰でもいいからこの混乱を共有して欲しい。そんな想いからとりあえず、最も手近な人間を呼び寄せたのである。
スマートフォンを乱暴に伏せた紅は、もう一度下着の中を覗き込み、やはり何もないという現状を突き付けられた。眩暈を感じながらも現実逃避がてら煙草に火をつけ、眉間を押さえてしばし紫煙をくゆらせる。
(……つーかこれってちんこが無くなっただけなのか? それとも体の他の部分も何か変わってんのか?)
紅は自分の腕や足の質感を確認し、それから胸を両手で鷲掴みにした。そこに昨日までとの違いは感じられず、四肢が細くなったわけでも胸に脂肪がついたわけでもない。男のままの体である。さらに鏡を覗き込んでみても、背格好や顔立ちに何か変化があるわけではなく、いつも通りの自分の姿が映し出されていた。着衣さえしていれば、まさか男として一番大事なブツが無くなっているなんて誰も思わないだろう。
(じゃあやっぱ、変わったのはここだけ……?)
そして恐る恐る、股間のさらに奥まった部分まで手を伸ばしてみると……なーんか触り覚えのある質感がある。ふっくらとした土手の中心に閉じた割れ目があり、その内側にそこはかとない温もりと粘膜を感じるのだ。
「まんこ付いてんじゃねぇかっ!!」
ヤリチンなせいで何の感触なのか即座に理解出来てしまい、紅は盛大に頭を抱えた。
(いやいやいやいや待て待て俺。落ち着け俺。逆に考えるんだ。これが単にちんこ無くなっただけだったら、小便も出来やしねぇぞ。そのうち膀胱破裂して死ぬぞ。じゃあまんこでも付いてた方がいいじゃねぇか。不幸中の幸いじゃねぇか、うん!)
自分自身を納得させるように心の中で言い聞かせ、そわそわウロウロと煙草を吸いつぶしながら室内を徘徊していると、インターホンが来客を告げた。
「黒澤テメェおせぇんだ、よ……?」
秘書が到着したものだとばかり思っていた紅は、玄関の扉を開いて目を疑った。そこにはやたら屈強な男達が、ずらりと居並んでいたからである。
「どうもー! デリバリー種付けおじさんでーす!!」
デリバリー種付けおじさんて何!?!?!? 紅の頭が疑問符で埋め尽くされる。しかし男達は紅が呆気に取られている隙にぞろぞろと室内に入り込んで来て、瞬く間に玄関先がむわりと熱気で埋め尽くされた。皆やたらデカい。紅も長身なはずだが、全員それに見劣りしない体格である。
その中の一人が紅の手を取り、ずいっと顔を近づけた。
「紅さん! 空君の誕生日プレゼントのために、子供が欲しいとお思いでしたよね!?」
「え? あぁ、まぁ……欲しいっちゃ欲しいけどよぉ……」
「そんなあなたの願いを叶えるため、デリバリー種付けおじさんは存在するのです! 幸い今紅さんにはおまんこが付いている!! まんことちんこがあれば子供は出来る! さぁレッツセックスあづああぁ゛あ゛あ゛!!??」
大声でまくしたてていた種付けおじさんが悲鳴をあげてのたうった。紅がおじさんの額に思いっきり根性焼きをぶちかましたからである。
「何でテメェらが俺の現状を把握してるのかも、揃って俺の部屋押しかけてきたのかも全く理解出来ねぇが、つまり俺は今ガキが孕める体だっつーのは分かった。だったらどこの馬の骨かも分からん野郎じゃなくて俺が選んだ相手と子作りするっつーの! テメェらなんぞお呼びじゃねぇんだよバーカ!」
「もっ、モブおじさんBいぃぃいい!!」
「このクソアマが!! こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!!」
さすがに泡を吹いて倒れる男と、それを介抱する他の面々。どうやらそれなりに仲間意識はあるらしい。逆上した一人が紅の背後に回り込み、素早く後ろ手で拘束。そして左右からそれぞれ別の男が手を伸ばし、股を開かせた恥ずかしい状態で持ち上げてしまう。連携が完璧だ。さてはこいつら、WMA(世界モブおじさん協会)の猛者共だな。
「おいゴルァッ!! あんまナメた真似してっと豚箱どころじゃ済まねぇぞ!? 全員まとめてコンクリ風呂に沈めっからなぁッ!?」
「はっはっはっ、威勢が良くて結構結構。いつまで持つか見物だな」
紅が歯を剥き出しにして怒鳴り散らすものの、情けない格好も相まってモブおじさん達は余裕の表情である。バタつく足を抑え込み、下着もろともスウェットを剥ぎ取れば、やはり出っ張りが何もない平坦な股間が白日の下に晒された。
ぴったり閉じたピンクの割れ目に、鼻息荒く男が顔を近づけていく。
「はぁ~♡ 元トップアイドルの未使用マンコ♡ スキャンダルまみれのセックス大好きビッチのくせに、肝心のココは生娘なのが堪りませんなぁ~♡」
「当然だろうが今までそんな穴無かったんだよっっ!!」
フスフスと匂いを嗅がれ、さすがに紅の顔面に血流が集まっていく。柔らかい部分を丸出しにされて男に取り囲まれているこの状況に、羞恥と不安が押し寄せる。
(こっ、怖ぇ! なんかよくわかんねぇけど、ちんこ付いてねぇだけでめっちゃ怖ぇえ!!)
アナルセックスで突っ込まれる側も人並み以上に経験してきてはいるのだが、女性器になっただけの股間を衆人環視されるというのは、今まで経験した事のない類の恐怖だった。男としての器官が無くなっているからこそ怖いのか、それとも本物の女性器だからこそ怖いのか、恐怖の根源が何なのかはよく分からない。
「ひっ……!!」
割れ目に肉厚な舌が這う。紅の喉から引きつった声が漏れる。快感、というにはいささか的外れである。慣れない場所に突然の刺激。混乱の方が強すぎて、未知の感覚を脳が処理しきれていなかった。
(気持ちワリィッ……!!)
唇を噛み締めて、足の指先まで強張らせて男の舌を受け止める紅。明らかに戸惑いの滲んでいる表情を見下ろして、優位を確信した男達は嘲笑を滲ませた。
「あれれ~? いきなり大人しくなっちゃってどうしたの~?」
「コンクリ風呂に沈めるんじゃなかったのかな~?」
揶揄いながら割れ目を左右に開かれて、粘膜を露出させた状態でさらに執拗に舐め回される。くすぐったいような、気持ち悪いような、悪寒のようなでもどこか官能的でもあるような、言葉にしづらい感覚がさざなみとなって下腹に押し寄せる。
(やばっ……! なんか、出そうっ……!!)
股間を這いまわる生暖かく濡れた質感。それは快感よりも早く別の感覚を紅に伝えてきた。考えてみれば起きて早々ナニが無くなりパニックに陥っていたせいで、今朝はまだ用も足していない。
「ッ、ちょっ……!! やめろ! やめろ、ってぇ!!」
紅の困惑を見透かしたかのように、紅を取り囲む男の一人が下腹部を圧迫し始めた。膀胱が刺激され、明確な尿意となってひくひくと粘膜を震わせる。
「ッ……~~~~~!!」
我慢しきれずに溢れてしまえば、後はなし崩しだった。黄金色の液体が吐き出され、股を舐っていた男の顔をじょろじょろと濡らしていく。
「おぉおっ♡ 女の子になったお股から初めてのおしっこ頂き~♡ アイドルに聖水引っかけられる激レア体験堪りませんなぁ~~~♡」
「っキモイキモイキモイ!! キモすぎんだよテメェらぁっ……!!」
おしっこを引っかけられて、嫌がるどころか恍惚の表情を浮かべるモブおじさんは普通に変態すぎてキモイ。だがそんな彼に悪態をつきながらも、一度決壊してしまったモノがそう簡単に止まるはずもなく……。結局何人もの男にじっくりと放尿を視姦されてしまった紅は、辱めに耐えかねてついには涙を零し始めた。
弱弱しく下がった眉尻と、潤んだ瞳、羞恥に上気した頬をぽろぽろと伝う雫。普段はクソ傲慢で偉そうな一色紅が、無様にお漏らしした挙句泣いている光景は、男達の嗜虐心をそそるのには十分すぎた。
「泣かないでよレイプしてるみたいじゃ~ん」
「子供、欲しいんだよね? おじさん達は協力してあげてるんだよぉ~♡」
「ほら、いっぱいペロペロされて、おしっこも出したおかげで、おまんこも大分緩んできたよ♡」
様々な体液が混ざってぬれそぼり、物欲しげに収縮を返す膣口が広げられる。そうして剥き出しになった入り口に、硬く勃起した男根が押し付けられた。いよいよ冗談では済まされない状況に紅は激しく身を捩ったつもりだが、ガッチリと拘束されているのでほとんど抵抗など出来ていなかった。
「やっ……! テメェらのガキなんざ欲しくねぇんだよっ!! やめろっ!! これ以上はマジで洒落になんねぇからなッ!!」
精一杯声を荒げるも、失禁後にぐずぐずと鼻をすすりながら凄んだ所で恰好がつくわけもなく。男達の表情はいやらしく緩んだままである。
(なんも分かんねぇ! 意味分かんねぇっ! 何で俺女になって、何でこんな事になって……!!)
亀頭が入り口をくぐろうとする圧迫感に、奥歯を噛み締める。どうにかしたいのにどうにもならなくて、ふうふうと荒い呼吸が零れ落ちる。
(こんな奴らに孕まされるくらいなら、ユキに……ッ)
侵されるその瞬間に脳裏を過ったのは、真っ白な恋人の顔だった。中を広げられる感覚が、どこか現実感なく下腹を伝う。恐怖と絶望に苛まれながら、急激に意識が遠のいていった……。
はっと覚醒すると同時に、景色が全く別のものへと切り替わる。視界に移るのは男達ではなく見慣れた天井。足元に蹴り飛ばされた掛布団と、嫌な汗に張り付く前髪。浅い呼吸のままに身を起こせば、そこは見慣れた寝室だった。遮光カーテンのごくわずかな隙間から、細く朝日が差し込んでいる。
一度目を覚ましたはずなのに、またベッドで朝を迎えているという奇妙な状況に、寝起きの頭では思考が追い付かない。だが考えてみれば今しがたまでの体験は不可解な事が多すぎた。
(……夢……?)
そもそもあんなに怪しい男達が大挙して来ればマンションのエントランスで止められるはずだし、紅の部屋がある最上階行のエレベーターは住人のルームキーが無ければ動かない。さらに連絡を入れたはずの黒澤がいつまで経っても到着しないなんて、現実ではあり得ない。極めつけは、股間だけが女のそれになっているなんて……。
そこまで思考を巡らせて、紅は弾かれたようにズボンの中身を覗き込んだ。
「あ……ある~~~~~!!」
そして顔を覆って安堵の溜息を吐き出した。そこにはいつも通りの見慣れたナニが存在していた。しかも、夢が夢だったせいか随分とお元気そうなご様子で。
夢で良かったと心底思いながら、紅はしばし脱力感に身を委ねていた。だが、夢だとしてもなかなか不安と恐怖を煽られるものではあった。
子供が出来るかもしれないっていうのも、誰の子供を孕むかっていうのも、女からしてみれば一大事だ。そしてその結果生まれた子供がどう育つかも大きな事だ。男性器を取り上げられて、孕まされる側の心理を身をもって味わったのも、神様が脅しをかけてきたのだろう。嘘をついたら舌を抜かれる的な、体で罪の深さを分からせるタイプのアレだ。
無論紅としても、本気で命を軽く見積もっていたわけではない。だが空に対してのベクトルに比べて、迎え入れる可能性のある命へのベクトルがあまりに小さかった事は、素直に認めざるを得ない。もしかしたら、空に対して愛情を感じられる自分に驕っていたのかもしれない。
枕元のスマホに手を伸ばす。時刻は六時を少し回った所で、当然ながら今朝の黒澤への通話履歴は無い。その事実に胸を撫でおろしながら煙草を咥え、背中からベッドに倒れ込んだ。紫煙をくゆらせながら、ぼうっと天井を見つめる時間をただ過ごす。
「……空にはちゃんと無理だって言お……」
こうして紅は、ごく真っ当な結論に行きついたのだった。
◇
空は紅の目を見ながらじっと話を聞いていた。その表情は少し残念そうではあったのだが、最初から「弟妹を連れてきてもらうのは無理なのだ」という事を知っていたかのような諦めも滲んでいた。
「……うん。なんとなく、そんな気はしてた。でもお兄ちゃんなら本当に、弟か妹連れてきてくれるんじゃないかなって思って、わがまま言ったの。……ごめんなさい」
家族が増える仕組みを理解しているわけではなさそうだが、それでも感覚的に、父親と母親が居ないと無理だという気はしていたのだろう。申し訳なさそうに、そしてどこか寂しそうに言う空の様子を前にして、紅の心がずきりと痛んだ。何ならやっぱりあの夢が現実だったら良かったんじゃないかとすら思った。せっかく空がワガママ言ってくれたのに!! お兄ちゃんなら出来るかもって思ってくれたのに~~~~!!
「ほんっと~~~にごめんな空ぁ! 他のモンなら何でも買ってやるから!! 不動産でも純金でも車でも何でも買ってやっから!!」
「ふ、ふどうさ……?」
やたら生々しい資産を持ち出され、空は首を傾げて困っていた。だが兄の熱意は伝わるようで、しばし逡巡した後、控えめに口を開く。
「じゃあ……ニ〇テンドースイッチ2がほしい。マ〇オカートのヤツ」
代替案として出されたのは、最新のゲーム機と人気ソフトだった。そうそうこれこれ、こういうの待ってました!! 紅は意気揚々とスマートフォンを取り出した。
正規ルートじゃなくて全然いい。転売ヤーからでも何でもいい。とにかく金に糸目を付けず手に入れろ。そんな連絡を黒澤に送り、空へと向き直る。
「よっしゃ空、それに関しちゃ百パー大丈夫だ。誕生日までにはぜってぇ届くから楽しみにしとけよ」
「あ、ありがとう! それで、えっと……」
「ん? 何だよ他にも何か欲しいのか? 遠慮すんな言ってみろ」
空はふるふると首を横に振った。だが相変わらず指先を絡め合わせながら、視線を斜め下にさ迷わせ、何か言いたそうに唇を擦り合わせている。
まだまだ短い付き合いではあるが、この弟が要望を素直に伝えられないクセがある事は紅も理解している。本来まどろっこしいのは苦手な性質だが、この時ばかりは急かさず空の言葉を待った。
勇気を振り絞った様子で、空が勢いよく顔を上げた。
「あの……! 買ってくれたゲームで……お兄ちゃんと一緒に遊びたい、です……!」
頬を染め、不安と期待を滲ませながら精一杯伝えてくる、その表情と声色にハッとした。そこで初めて紅は、誕生日プレゼントとして弟妹を強請った空が「本当に欲しかったもの」を理解出来た気がした。
「あー……」
「あっ、あの、えっと……だめだったら、いいんだけど……」
目に見えない何かにこつんと後ろ頭を小突かれた気分になる。養子縁組も代理母もホムンクルスも必要ない。弟の望みは、本来自分の身一つで事足りる物だったのだ。
一瞬口ごもった紅の様子を迷惑がっていると捉えたのか、おどおどと視線をさ迷わせる空。紅はそんな弟の顔を改めて覗き込み、少し意地悪く、だが愛嬌たっぷりに目を細めた。
「いや、それは受けて立つけどよぉ……。俺はゲームだろうが弟相手だろうが、勝負事は一切手加減しねぇがよろしいか~?」
想いもよらぬ挑戦的な一言を受け、空は面食らった表情を見せていた。だが、その後むず痒そうに口角を引き結び、それから嬉しそうに笑って、最後に紅の真似をするように悪戯っぽい笑顔を浮かべたのだった。
「……うん、いいよ。俺も負けないもん」
「お、言うね~♡ 俺の弟たるものそうでなくっちゃな♡」

