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結局俺の初めては全部この人に奪われた。4

letm_official
R18/BL/一色紅×水方ユキ

アイドル候補生として充実した毎日を送る水方ユキ。しかしそんな彼にも悩みがあった。事務所社長の一色紅が、やたら自分と距離を詰めてくるのである。
何とか適度な距離感を保とうとするものの、ひょんな事から紅の自宅に招かれ空気に飲まれてしまい……。

 そこからは、緊張しすぎて動揺しすぎて昂りすぎて、よく覚えていない。
 ただ俺はお姫様抱っこで大きなベッドに連れていかれて、全身くまなく蕩けさせるみたいに、紅さんに気持ちよくさせられた。
 実は紅さんの事を邪な目で見始めてから、男同士でどうするのかをちょっとだけ調べていた。だから「彼女」って言われた時点で何をされるかの察しはついていた。女の子としての初めてのセックスって、やっぱり痛いんだろうか、怖いんだろうか。不安もあったけど、そんなものは早々に消し飛んだ。
 何でって、全てが気持ち良すぎて。
 
「あぁぁッ♡♡ いっ、いく♡ いくう゛ぅ♡♡ もぉらめ♡♡ みないれっ♡ みないでえぇッ♡♡」
 体内に埋められた紅さんの指が、卑猥な音を立ててイイ所を往復していく。俺の甲高い声が部屋に響き渡る。もうずっと、ずーっとずーっと、ちんぽをシコシコ甘やかされながら、女の子にするみたいな動作で延々とナカを穿られる時間が続いている。何度イかされたのかなんて分からなくて、俺のお腹は自分の精液でドロドロで、シーツにまで零れて大きな染みが出来ていた。
「だーいじょうぶ♡ だらしないドロッドロのイキ顔可愛いぜ♡ ほらもっと何も気にせずイきまくってみ? 俺はどんなユキでも大好きだからな〜♡」
「あっ♡ あぁっ♡♡ またくるっ♡♡ きひゃうッ♡♡ へんなのっ、きひゃうよお゛ぉぉおっ……!!♡♡」
 こりゅんこりゅんこりゅんこりゅんこりゅんっっ♡♡♡ お腹側のしこりを弄ばれて、またメスイキの波に飲まれてしまう。足を開いてお尻を浮かせて、紅さんに向けてカクカクと腰を振りながらのオーガズム。こんな恥ずかし過ぎる恰好やめたいのに、気持ち良くて体が勝手に動くのを止められない。気持ちいい♡ もっとシて欲しい♡ って股の間が自分のものじゃないみたいに紅さんにオネダリしてる。
「すっげぇユキ。もう三本で広げても余裕だぜ?」
「へっ、オぉお♡♡ やらッ、あぁぁっ♡♡ くうきっ、はいっへえぇぇ……♡♡♡」
 にゅぱあぁぁあっ……♡♡ 人差し指、中指、薬指の三本で、クスコのように腸壁を広げられる。敏感になった粘膜に空気が入り込む刺激に耐えられなくて、お尻がキュンッキュンッ♡ と脈打ってしまう。そのまま一旦指を閉じて、また広げて、閉じて、広げて、ゆっくりと繰り返しながら、お尻おまんこの中を捏ねられる。にゅぱぁっ♡ くちゅうっ♡ にゅぽぉっ♡ くちゅうっ♡ いやらしすぎる水音と、メスイキ直後の収縮責めが堪らなくて、俺は喉を晒して身悶えるしか出来なかった。
(おまんこ広がってる♡♡ クパクパってされてるぅ♡♡ 切ない♡ お腹すうすうするの切ないよおぉ♡♡ もっと温かいの欲しい♡♡ もっと♡ もっと♡ もっとミッチリ埋め尽くされたいいぃ……!!♡♡♡)
 そんな俺の気持ちを見透かしたように、今度は三本束ねた指が奥までぬるうぅぅ~♡ と掻き分けてくる。根本まで挿入した状態で、一番深い部分をざわざわと擽られると、お腹の奥から喜びと快楽が沸き上がって来る。
「ほっおぉぉおお゛ッ……!!♡♡♡」
 丸く開いた口から、自分でも聞いた事のない声を上げて悦に浸る。クチクチクチクチクチッ♡♡♡ 下腹部からエッチな音が響いてくる。俺の体が鳴らしてる音。男の人の指をおしゃぶりしてる音。紅さんに気持ちよくされちゃってる音……♡♡
「……そろそろ大丈夫そうかな~っと……♡」
 全身を突っ張らせながら大歓迎で愛撫を受け止める俺を見て、紅さんがぽつりと呟いた。にゅちゅうぅッ……♡ 束ねた指が抜けていくと、ぱくっ♡ ぱくっ♡ とお尻が空気を食んでいるのが自分でも分かってしまう。快感の余韻で勝手に跳ねる下腹を感じながらぼんやりと視線を持ち上げると、まさに紅さんが服を脱ぎ捨てている最中だった。
「ッ……!♡」
 見てはいけないものを見ている気がして、真っ赤に茹だった顔の中で目が泳いだ。衣装から肌が覗く事こそあれ、トップアイドルの裸なんて、テレビでも雑誌でもネットでもどんなメディアでも絶対に見られない姿だ。特別感よりも、聖域を犯しているような背徳感の方を大きく感じた。
 だけどその中でも特に俺のスケベ心が反応したのが……
(あ……♡ 紅さんの、ちんぽぉ……♡♡)
 恥ずかしいのに指の隙間から見ちゃう女の子みたいに、こんな所まで形がきれいでかっこいい大人ちんぽに目が釘付けになってしまった。すっかり勃ち上がっているそれが、俺に興奮してくれている証明のようで嬉しかった。あれが今から俺の中に入るんだ。あれで今から俺、女の子にされちゃうんだって、期待と不安で鼓動が高鳴る。お尻が勝手にキュンキュン収縮する。
「なーにジロジロ見てんだよこのエロガキが♡」
 髪をかき上げながら目を細める表情がかっこよすぎて、また体がズクンと疼いた。
「俺、痛いとか怖いでセックス嫌いになって欲しくねぇからさぁ」
「あッ♡♡」
 ぬりゅんっ♡ お尻の割れ目を固いものが滑る。
「処女相手の時は、キツそうなら入れなくてもいっかな~って思ってんだけど……」
「ひあっ♡ あ、あぁん……ッ♡♡」
 くちゅうっ♡ 柔らかくなった穴に先端を食まされて、粘膜同士が吸い合う期待感に身悶えた。
 ちゅっ♡ ぬちゅんっ♡ ちゅむっ♡ ちゅぽんっ♡ 浅く埋めて、少し離して、入りそうで入らない位置で弄ばれる。亀頭が押し付けられる度に大股開きの腰が浮き上がり、離れていく度に悩ましくくねって追いすがる。自分の意思では止められない動きに翻弄される俺を見下ろして、紅さんが笑みを零した。
「……ユキは心配なさそうな♡」
「ぁ♡ あッ、あぁっ♡♡ あおぉおッ……!!♡♡♡」
 くちゅうぅぅう~~~~~♡♡♡ いよいよ先端が肉輪を押し広げる。トロトロに解れた腸壁内に、熱い質量がゆっくりと侵入してくる。圧迫感と、息苦しさ、そして未知の行為に対するほんの少しの恐怖心は、確かにある。だけどそれを補って余りある興奮と悦びが、俺のお腹を満たしていた。紅さんが俺の中に入ってきてくれている。紅さんと繋がれている。紅さんと、ぴったりと一つに……。その事実を噛み締めていると、まるで長年の夢が叶ったかのような錯覚に陥って、信じられない事に目頭が熱くなってきた。じわじわと涙を滲ませる俺の表情を見て勘違いしたのか、少し眉を寄せた紅さんの手のひらが頬を包んだ。
「ありゃ、もしかして痛ェ?」
「あっ♡ ちがッ♡ ちが、くて……!!」
 腰が止まり、もしかしたら抜かれてしまうのではないかと思った俺は、慌てて紅さんの手を掴んだ。
「な……なんか、すごく、うれしくてぇ……♡ ……っ……ご、ごめんなさいっ……すっごく、へんな事、言っちゃうかも……! おれぇっ……! くれないさんと……ずっと、こうしたかった……!♡ 紅さんのこと、ずっと……ずっとぉ……!!♡♡」
 どうしよう。こんな事言うつもりなかったのに。俺今おかしくなってる。すごくおかしな事を口走っている。恋心に気付いたのですらついさっきなのに、ずっとしたかったなんて思ってなかったくせに、まるで積年の想いを打ち明けるかのように、溢れてきて止められない。どうしよう、何で、何で……。
「うん」
 しかし紅さんは何も言わなかった。困惑する俺にただ相槌を打ち、紅さんの手を掴む手首を、さらに上から握りしめられた。痛いくらいの力で、縋り付くように、強く。
「……うん」
 もう一度、確認を取るように頷いて、そのままじっと頭を下げて
「やっと会えたな、ユキ」
 次に顔を上げた時、感極まって潤んだ深青が、愛おしく俺の事を見つめていた。
 やっと会えた。おかしな表現だった。だけど俺はその言葉に、その表情に、心臓を打ち抜かれた。いよいよ決壊した涙腺から大粒の涙を溢れさせ、紅さんの背中に腕を回してしがみつく。すると紅さんも俺の頭を掻き抱いてきて、幸せそうな溜息を零した。その音を聞くとますます心が掻き乱されて、俺は肩口に顔を埋めながらわあわあ泣いた。
 
 どれくらいそうしていただろうか。
「ひっ、く……♡ うぅ……ぐずっ……んんッ……♡」
 謎の激情が過ぎ去る頃には、中はぴったりと馴染みあって、境目がよく分からなくなる程蕩けていた。涙が落ち着き始めると、次は自然と燻る熱が気になってくる。鼻をすすりながらも腰をくゆらせ始めた俺に、耳元で苦笑が零された。
「落ち着いた?」
「う、ンん……っ♡」
 耳朶にキスを落され、それから首筋に滑って行き、くすぐったい性感に身をよじる。きゅんっ♡ きゅんっ♡ お尻が勝手に収縮して中の物を締め付けて、今何をしていたのか、どういう状況なのか、改めて現実感が戻ってきた。
「あ……♡ あぁぁッ……♡」
 ぐっ、ぐっ、確かめるように奥に押し付けられ、それからゆっくり腰を回される。馴染み切ってひっついていた粘膜同士が擦れ合うねっちょりとした水音。深い所まで入った熱いちんぽで、柔い内側を優しく捏ねられて、ただでさえぐちゃぐちゃでもうよく分からなくなっている思考がさらに崩れ落ちていく。
「ん、あん♡ っ、あぁ♡ はぁあぁ♡♡」
 もうイき方を知ってしまったお尻おまんこに与えられる、マッサージみたいに緩慢でまったりとした愛撫。息苦しさも不安ももうそこには無く、ただ気持ちいいだけの性刺激が延々と注ぎ込まれていく。
「くれないさ、ぁ♡ ん♡ ひ♡ くれない、ひゃぁあ……っ♡♡」
 十分柔らかく解れているのに、すっかり紅さんを受け入れてしまっているのに、エッチな音を立てながらおちんちんでさらに体内を捏ね繰られる。規則的に気持ちいい所が押しつぶされて、奥をちゅくちゅく舐められて、少しずつ、段々と、逃しようのない熱が降り積もっていく。
 紅さんはもう軽口も叩かずに、じいっと俺の反応を眺めながら、ゆるやかに腰を使うのみだった。薄暗い部屋で、俺専用の天蓋のような赤い髪。そのなかに光る、愛情に満ちたディープブルー。それがあまりに優しくて、さっきとは別の意味でまた目が潤んだ。感じている変な顔を見られるのは恥ずかしかったけど、でもその瞳の中に俺が居る事が、嬉しい、心地いい、幸せだ。このままずっと、閉じ込められていたいと思うくらいに。
「ぁ♡ あッ♡ きもひいぃ……ッ♡♡ いっちゃ……うぅ♡ くれない、さんでぇっ♡ いきそおぉッ……!♡♡」
 AVで見たような、大きな音を立てて思いっきり腰を打ち付け合う事だけがセックスだと思っていた。でも実際は全然違った。こんなに優しくて温かくて気持ちいい方法があるなんて知らなかった。
 紅さんと繋がったまま感じる絶頂の気配が嬉しくて、元々熱かった体にさらに熱が籠っていく。全身から汗が噴き出して、ぴったりくっついた俺のお尻と紅さんの下腹部が、にゅるにゅると滑り気を帯びていく。
「……うん、いーよ。イくとこ見せて♡」
 目と、唇を、薄く微笑ませ、低くて熱っぽい声が鼓膜を擽った。気持ち良さそうな吐息交じりの声。それがトリガーになった。ゾゾゾッ♡ と抗い難い大波が押し寄せて、俺をさらっていった。
「ッ~~~~~♡♡♡ くれないさ、ッ、あっ♡ あぁあッ♡♡ あぁあ゛あぁっ———~~~~!!♡♡♡」
 びくんっびくんっびくんっ♡♡♡ 不自由な体勢のままお尻が跳ね上がり、喉を晒しながら絶頂を極める。前戯で散々イかされたちんぽからはもう精液は出せなくて、俺は本物の女の子みたいに、お尻を痙攣させて気持ちよく中を締め付けるだけのアクメを迎えてしまった。
「はーッ♡ はーッ♡ あ、んむうぅっ♡♡」
 はくはくと酸素を求める唇に、紅さんの舌が差し込まれる。そのまま始まる、ただでさえ残っていない理性を根こそぎ奪う深いキス。気づけば俺は紅さんの舌に吸い付きながら、くねくねと腰を動かしてさらなる刺激を強請っていた。俺の動きに応えるように、紅さんが少し腰を引いて、たんっ♡ と軽く奥を穿つ。繋がってから初めてまともに刻まれたピストン。腰から頭の天辺まで、突き抜けるような快感が走った。
「ッんん゛ぅ゛……~~~~♡♡♡」
 目元を蕩けさて身悶える俺の様子から、悪くない事が伝わったのだろう。紅さんはキスをしたまま、同じ動きを繰り返した。たちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡ たちゅんっ♡ 規則的な動作と共に、交接音が鳴り響く。俺からは繋がっている所なんて見えないけど、それでも二人の間をねばっこい糸が引いているのが分かってしまうくらいイヤラシイ音だった。
(すごくエッチな音してるよおぉ♡♡ 紅さんと繋がってるの分かる♡♡ 嬉しい♡♡ こんな気持ちいいエッチ教えてくれて嬉しいっ♡♡ 紅さん♡ くれないさん♡ くれないさん好き♡ すき♡ すきいぃ♡♡)
「ん~~~~~ッ♡♡♡ んンン゛ッ~~~~~~~~!!♡♡♡」
 膝下をぴーんと突っ張らせながら、紅さんの体を持ち上げんばかりに下肢を震わせ、追加のメスイキを迎える。ついうっかり突き出してしまった舌を、紅さんはすぼめた唇で吸い上げて、そのまましゃぶるように頭を上下し始めた。何か別の事を匂わせる動作で敏感なベロを扱かれて、メスイキ途中の興奮にさらに拍車がかかっていく。中々痙攣が収まらず、お腹がきゅんきゅん収縮しっぱなしで、その度に紅さんのちんぽを鮮明に感じさせられて、自分が今女の子にさせられているのだとまざまざと知らしめられ続けた。
 長々とした絶頂が終わり、俺の体が弛緩し始めた頃、ようやく舌も解放された。ちゅぽっ……♡♡ 吸盤が離れるような音と共に、二人の口元に細い糸が結ばれた。
「へあぁあ……♡♡ はーっ、はあぁっ……♡♡」
「……い~っぱいイけて、ユキはいい子だな~……♡」
 余韻に翻弄される中、紅さんは優しく笑って頭をよしよしと撫でてくれた。俺は惚けながらそれを受け止めていたけれど、ふとその目の奥に、先ほどまでは見つからなかった、油断ならない情欲が湛えられている事に気付いてしまった。
 ぞくりと背筋を粟立たせた時には、もう遅かった。
「でーもー……♡」
「ほっ、お゛ぉッ……!!♡♡」
 にちゃああぁぁぁッ……♡♡ 絡みつく肉ヒダを引き剥がすように、熱い塊が抜けていく。奥を捏ねられるでも、浅く刻まれるでもない、新たな快感にみっともない声が上がった。
「もっと、もーっと、イってみよっか?」
「あおお゛ォッッ!?♡♡♡」
 どちゅんッ♡♡ 何の抵抗もなくなった胎内に、重たい一突きがお見舞いされる。ジンッジンッジンッ♡♡♡ お腹の奥に亀頭が突き刺さり、甘い痺れが充満する。
「ほんとはさぁ、ここまでするつもり無くて」
「あ゛ッ、ぁ、ああぁぁッ♡♡」
 また引き抜かれて
「ユキちゃんが良い感じで終われる所で止めて、後はまたのお楽しみにするつもりだったんだけど」
「おお゛ォ!!♡♡」
 奥を穿たれて
「ちょ~っと体の相性良すぎたよね~……ッ♡」
「ひお゛ッ、おぉぉッ♡♡♡」
 喉を晒しながら喘いでただ刺激を受け止める。
 はぁっ! 熱っぽい溜息と共に紅さんが前髪を掻き上げた。爛々と輝く双眸が剥き出しになる。チカチカと火花を飛ばしながら目を白黒させている俺に向けて、紅さんはほんのり上気した顔で、最後に一度、いつも通りの笑みを取り繕ったのだった。
「ほんっとーに無理な時はさぁ……右手上げてくださーい♡」
 ……歯医者?
「お゛オおぉ゛ッッ♡♡♡ お゛♡ おォッ♡♡ ほ、お゛おッ、おぉぉ゛ッッ♡♡♡」
 場違いな宣言に一瞬冷静になりかけた思考が、すぐさま掻っ攫われていく。俺の腿を抱え込みながらの深いピストンで、お腹がゴリゴリ抉られる。さっきまでの緩やかな動きとは打って変わって、ベッドのスプリングが煩く軋み、聞くに堪えない母音まみれの声が部屋に反響する。こんなバカみたいな声出してたら紅さんに嫌われちゃうんじゃないかと心配になったけど、それを抑える事も出来なくて、俺はただきつくシーツを握りしめた。
 快感、衝撃、息苦しさ、他には何だろう。とにかく熱くて激しくて怖いくらい気持ち良くて、浅い呼吸で頭に酸素が回らず、下半身にしか現実感がない。さっきまでの俺を悦ばせるためのセックスじゃない。紅さんに激しく求められているのが、性経験が無い俺にすら伝わってきた。
 濁流に飲まれながら、うっすらと目を開く。上下に揺れる視界の中、眉根を寄せる紅さんの顔が見えた。
 半開きになった口から切羽詰まった呼吸が漏れている。頬を伝った汗が、顎から雫となって零れ落ちる。俺が見ている事に気づいたのか重たそうに持ち上げられる瞼。熱っぽい視線が絡み合い、ただでさえ高い体温が、また一段階上がる。
(ッ……!♡♡ 男のひとの、かおしてる♡♡ 俺で、興奮して♡ こんなっ♡ くれないさんが、こんな顔してくれてるなんてぇ……ッッ♡♡)
 余裕のない動物みたいな顔。それが凄く嬉しくて、きゅう~~~~っと、ナカを締め付けてしまう。そうすると紅さんが喉奥で小さく喘いで、もっと深く繋がれるように腰を抱え直された。
 心臓が早鐘を打ちすぎて壊れそう。どちらのものか分からない汗と体液で皮膚が滑る。肉がぶつかり合う音と、粘っこい交接音、息遣いに被さる俺の煩い喘ぎ声。もう俺はイっているのかいないのかもよく分からなくなっていて、熱に囚われたまま紅さんに食べられているみたいだった。
「ねぇ、ユキ……ッ、いって、いい? ユキの中、出していいよな? はあっ……責任、取るからっ……!」
 男相手の責任って、何の事を言っているのかよく分からなかった。だけどセックスの昂りに任せて吐かれた意味もない一言だとしても、その顔と、声と、言葉で、俺の心は最高に盛り上がった。だったらそれが真実だ。
「いっ……いいっ♡ いぃのお゛ぉ♡♡ くれない、ひゃんがあッ♡ ほしいぃ♡♡ なかっ、ひぐっ♡ なかに、ッ、だひて、え゛、お゛ッ♡ おッ♡♡ お、おぉ♡ あぉ゛おッ♡♡♡」
 最後まで言い切る前に、激しい突き上げが人間らしい言葉を奪った。俺のお腹の奥の方から、紅さんのちんぽに吸い付いている音がする。ちゅっ♡ ちゅっ♡ って、まるで中出しをオネダリしてるみたいな音。自分が鳴らしているなんて信じられなくて、でもそんな音すらも、興奮した。
 ぱちゅんッ!♡ ばちゅんッ!♡ ばちゅんッ!♡ ばちゅんッ!♡ ちゅぱっ♡ ちゅぱっ♡ ちゅぱっ♡ ちゅぱっ♡
 紅さんがぐっと唇を噛み締めて、俺の太腿に指先を食い込ませた。その瞬間の表情が、俺で一生懸命になってくれている表情が、すごく尊くて可愛いなんて、場違いな事を考えた。
「はっ、ぁ……!!♡ ッ……!!♡♡」
 一際大きな抽挿の後に動きが止まる。内側の熱がポンプのように収縮して、お腹の中に弾けていく。ぞくッ♡ ぞくッ♡ ぞくんッ♡♡ 脳味噌を裏側から擽られるような痺れに全身が苛まれる。
「ッくれないさぁ゛……~~~~~!!♡♡ あ゛ぁぁッ……!! ひゅきいぃ♡♡ らいひゅきい゛ッ♡♡ ッはぁ゛あぁ♡♡ いっぱい、でてるぅっ……♡ うれしいっ♡♡ おれでっ、きもちよくッ♡ なってくれへえぇ゛♡♡ うれっ、ひいぃい゛……ッッ♡♡」
 びちゃびちゃと跳ね返る精液を感じながら女の子みたいな感想を口走ると、紅さんに体を掻き抱かれた。煙草の匂いと香水の匂いに混じる汗の匂い。耳元で感じるふーふーという呼吸音。ちょっと痛いくらいの力で俺を閉じ込める腕。普段はかっこよくていい匂いで余裕たっぷりの紅さんが、俺のせいで乱れてくれている。
 こんな風にこの人に愛されて、心臓が溶けて無くなってしまいそうなくらい幸せだった。
 
 
 
 余韻でベッドから起き上がれなくなっている俺の前髪が持ち上げられ、それからちゅっと額にキスが落とされた。
「ユキちゃんオメデト♡ これで大人の仲間入りだな♡」
 そう言ってニッコリと笑う紅さん。ひと汗かいた後にも関わらず一切完成度の落ちない顔面を眺めながら、俺はまだふわついたままの頭でこの状況を噛み締めていた。
 一色紅に好きだと言われて付き合う事になって、彼がいつも寝ているベッドで信じられないくらい気持ちいい初エッチを教えて貰って、終わった後もイチャイチャされている……?
 ……夢では?
「何やってんの?」
「……いや、オーディション合格したのも含めてやっぱ夢じゃないかと……」
「え~夢みたいに気持ち良かったって事~? そいつぁ光栄~~~♡ 大丈夫だいじょ~ぶ~♡ これからは俺が定期的に抓って夢じゃない事確認させてやっからな~~~♡」
 自分で自分の頬を抓る俺の指を、さらにその上から紅さんが抓ってぐいぐいと引き延ばしてくる。めっちゃ痛かった。頼むからやめてもらうようお願いして、加減を知らない指先を遠ざける。
「これって大人の仲間入りでいいんですか……? 俺って男だけど、その、これでも童貞じゃなくなった事になる……?」
 じんじんと痛む頬を摩りながら、先ほどの言葉に対する疑問点について問いかけた。すると紅さんは煙草に火をつけながら、しれっと答えた。
「いんや童貞だぜ。童貞非処女」
「やっぱ童貞なんじゃないですかっ!!」
 ぼふっ! 枕が俺に叩かれ悲鳴を上げた。
「い~じゃん童貞だろうが何だろうがヤったらもう大人なんだよ。ユキは俺の彼女なんだからこれからも俺だけのオンナノコで居ればいいんです~。はい解決! これにて終了!」
「いっ、嫌ですっ! 俺だって男です!! 童貞くらい捨てたいですっ!!」
 俺の主張は健全な男子として至極全うな物のはずだが、紅さんはまるでそれがワガママだとでも言うかのように「しゃぁねぇなぁ~」とぼやき、やれやれと首を振ったのだった。
「じゃあまた俺が手伝ってやるから、次する時はおちんちんの方も大人になってみる~?」
「……へっ……? ど、どういう……」
 瞬時には噛み砕けず疑問符を浮かべる俺に対し、紅さんが色っぽく目を細めた。
「今回ユキがされた事を、今度は俺にもしてみる? ってこーと♡」
 耳元でぼそぼそと吹き込まれる声。今日俺がされた事を……紅さんに……する……? その意味を理解し始めた俺は、顔に上っていく熱を感じながらゆっくりと布団を引き上げ、表情を隠した。
「……や……やります……」
「あはっ♡ 楽しみだねぇ~♡」
 欲望に忠実な俺の回答に、愉快そうな声色が重なったのだった。
 
(こうして俺のハジメテは全部この人に奪われた)

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