小説

相方ガチ勢朔宮影縫の頭の中

letm_official
朔宮影縫/水方ユキ/一色紅

縫ちゃんがただただユキちゃんの事を推してるだけのお話です。縫ちゃんのこの、表情や言葉には出ないけど頭の中はめっちゃ喋ってるみたいな、ムッツリの典型みたいなノリすっごい可愛いなぁと思います。

「おーっす。おめーら写真集出来たぞ~」
 事務所に居た俺達に紅が差し出したのは、今度発売されるREVERSE写真集のサンプルだった。「わぁ! 見たい見たい!」なんて、嬉しそうに受け取るユキに続いて、俺にも一冊手渡される。スマホを脇に置き、ソファに転がったままページを捲った。
 ……ユキが可愛すぎるはい百点。
 どのページを捲っても永遠にユキが可愛くて幸せだ。何でこんなに可愛いんだろう。初対面の時から可愛いなとは思ってたけど、最近ますます輪をかけて可愛くなってる気がするし何なら大人っぽくなって色気も出てきて美しいまである。こんな千年に一度の美少女(概念)がよく今まで誘拐一つされずに生きて来られたものだと思う。それもこれも日本の治安がいいおかげだろう。ありがとう日本、ユキを守ってくれてありがとう。
 俺達の写真集は二人の接触面積と売り上げが分かりやすく正比例するため、撮影ではユキとくっつくように指示される事が多い。つまり仕事だからという大義名分の下、合法的にユキとイチャイチャ出来るのが写真集の撮影というわけだ。当然今回の撮影も凄く楽しかったし、ユキが途中で「サービスしちゃおっか♡」なんて言い出してキスしそうな勢いでベタベタしてきた時には、ついうっかりカメラマンに向かってドヤ顔になってしまった。だけど俺はドヤ顔も含めて需要があるらしいので、ユキがベタついて俺がドヤってファンが喜んで売り上げが伸びて結果皆幸せな優しい世界なので助かっている。ただこの事に関して、俺は一部の水方ユキ単推し過激派にぶっ殺されそうな勢いで妬まれてネットで批判されまくっているらしいが、こればっかりはもう仕方ない。悔しかったら匿名でコソコソ叩いてないで正当に努力してお前がユキの相方になってみろよとしか言えない。まぁ? この席をそう易々と譲る気はないけどな。
「なぁ影縫見て見て~。これほんとに猫耳ついてるみたいじゃない? 編集の力ってすげー!」
 よこしまな俺の腹の中とは裏腹に、ピュアすぎるユキが楽しそうに見せて来たのは、二人で猫耳をつけて撮影した写真が並んでいるページだった。撮影時には少しの作り物感があったそれも、画像編集でまるで本当に動物の耳がついているような仕上がりになっている。この小道具、俺は正直気乗りしなかったけど、ユキがキャッキャ言ってて可愛かったし現在進行形で無邪気に可愛いからオッケーです。しかし何だこの片方だけ垂れた猫耳は愛おしすぎるだろふざけてるのか? 予約購入特典としてこの猫耳ブロマイドがランダムでついてくるらしいので、とりあえず百冊ばかり予約しておこう。
 こういう事をすると仁亜から「そんなの紅に言えばすぐ揃うじゃん……」とドン引きされるのだが、あいつは何も分かってない。確かに紅に頼めば、全種類被り無しで、使用用、保存用、布教用と三セット簡単に用意して貰えるだろう。だけどそれが果たして水方ユキガチ勢筆頭と言えるのかという話だ。俺はユキの一ファンで居たいし、ファンたるものユキに還元できる形でグッズを手に入れたい。つまりそう、課金だ。(ユキに還元すると高確率で自分自身にも還元されてしまうのはもうどうしようもないので諦めている)
 そんな事を考えながら、ユキの話にも耳を傾けつつ、ユキの可愛さが詰まった写真集を捲っていくという、目も耳も幸せな時間をしばし過ごした。が、それも終盤という所になって、とんでもない写真が目に飛び込んできた。
「おい紅」
「ん?」
「このページどうなってるんだ何でユキの腹チラなんて載せてるんだ」
 思わず紅を呼びつけて対象のページをはたいた。
 ユキはダンスレッスン中、度々Tシャツの襟ぐりに顔を収めて腹を丸出しにしながら「アザラシマン!」とか言ってふざけ始めるのだが、まずその発想が可愛い上に、丸出しのお腹が見られてしまうとか役得すぎる。意外にしっかりと体を鍛えているため、細い腰に浮き上がる腹筋の凹凸がとてもエッチなのだ。ほんとご馳走様ですいつもありがとうございますアイドルやってて良かったです。
 ……じゃなくて。
 その時の写真がオフショットとして掲載されていたから驚いた。これはコンプラ的にアウトだろ。ユキのお腹なんてエッチなもの写真集で堂々と見せていいわけないだろ! だってこれいわばCERO「A」全年齢対象商品なんだぞ!!
 だけど紅は、何がダメなのか分からないといった具合に、煙草をふかしつつ首を傾げてきた。
「え? だってそのユキ可愛いし、ちょっとお色気要素あった方がファンも喜んでくれるだろ?」
「喜ぶどころじゃない! こんなの見せたらユキの事やらしい目で見るヤツが増えるって分からないのか!?」
「うーわー。ユキパトえげつね~。縫ちゃんのそういうガチクソむっつりな所、俺は好きだぜ♡」
「からかうな! このページ、今すぐ別の写真に差し替えろ」
「はぁ!? 今更そんなの出来るわけねぇだろもう刷っちまったんだぞ!?」
「差し替えろ」
「いーやーだ! こればっかりはいくら縫ちゃんの頼みでも聞けねぇな!」
「大体こんな事になる前に何で俺に見せなかった!?」
「見せたっつーの! チョイチョイ見せてたよ!? それをバイオハザードばっかりやっててろくに確認しかったのはテメェの落ち度だろうが!」
「新作やってる最中に全ページ隅から隅までチェック出来る訳ないだろ! こういう重要そうな部分をピックアップして見せなかったのはお前の落ち度だ! どうせユキパト通らないだろうから黙って進めようとか思ってたんだろ!?」
「はぁ~~~~!? テメそういう所が高飛車だって反感買って一部の過激派から刺されそうになってんだからな!? 自分を中心に世界が回ってるとでも思ってんのか!?」
「何から何までお前にだけは言われたくない」
「俺はいいんだよだって俺だもん!! ただ影縫テメーはダメだ!」
「……お前とはそのうち決着をつけないとと思ってた所だ」
「望む所だよ四十八手組手で勝負でもするか? お子様縫ちゃんの足腰ガックガクにしてやんよ」
 どちらも譲る事無く言い争いがヒートアップし、喧嘩に発展しそうになった時……オロオロとしたユキが叫んだ。
「や、や……やめてーーー!! 俺のために争わないで下さいッ!!」
 目に涙を溜めながら必死になって争いを止めようとするユキ。まさに大天使ユキエルが降臨なされた瞬間だった。どうやら紅も全く同じ気持ちらしく、あからさまにたじろいだ気配が感じられた。
 俺と紅は、しばし感情の着地点を見失ってまごついた。だがその後、握っていた拳を開き、そして相手の手と結んだ。
「……悪かった……カッとなってつい……」
「いや……俺も配慮が足りなかったわ……次から気をつけるな……」
 
 ———こうして世界は浄化された———

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